腸とうつの関係!腸のセロトニンが脳に効くなんて嘘!



最近、腸内環境が健康に与える影響についての研究が進んでいます。その中で、実は人間の健康状態と腸内環境が密接に関係してきていることも分かってきています。

その中には、腸内環境と精神的な健康の関係も分かってきました。なんと腸内環境を整えると、うつ病の改善に効果があることが分かってきたのです。

でも、その理由の中には、とんでもない嘘もあります。それが腸で作られたセロトニンが脳に運ばれて、心を安定させるというものです。

いったいなぜこれが嘘なんでしょうか?

ここではその理由と、腸内環境とうつ病の関係をお伝えします。

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目次

セロトニンは脳と腸で作られている

うつ病の原因の一つに脳内ホルモンのセロトニンの分泌不足があります。

セロトニンは適度なやる気と心の安定をもたらしてくれる働きがあります。うつ病患者の場合は、ストレスなどが原因で、このセロトニンの分泌が弱いため、心が安定せず、不安や焦燥感などを感じやすいのです。

このセロトニンの分泌異常を改善すれば、うつ病の改善が期待できるわけです。

では、このセロトニンは体のどこで作られているのでしょうか?

実は体内のセロトニンの90%以上が小腸にある腸クロム親和性細胞腸クロム親和性細胞様細胞が作っています。なんだか難しい名前の細胞ですが、要は小腸で作られているってことです。

そして、小腸で作られたセロトニンは、主に小腸と大腸の蠕動運動を促進するために使われます。

一方、脳で作られているセロトニンは全体のうちのたった2%なのです!

そうなると「小腸で作られるセロトニンが不足すると、脳のセロトニンも足りなくなるんじゃないか?」って思いませんか?実はこれが誤解の元なんです。

実は間違った情報を発信している人の根拠も「腸内環境を改善して、小腸が正常にセロトニンを作れるようにすれば、脳が必要なセロトニンを補うことができる」というものです。

いったいなぜこれが間違いなんでしょうか?

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腸のセロトニンが脳に運ばれることはない!

同じセロトニンという物質でも、使われる体の部分によって、働きが全く違うのです。

セロトニンの働きは主に次の3つです。

  • 腸の蠕動運動を促進する(小腸と大腸)
  • 適度なやる気と心の安定をもたらす(脳)
  • 血管の収縮を促進する(血管)


小腸で作られたセロトニンのほとんどは小腸と大腸で使われて、一部は血液の中の血小板という成分に取り込まれます。血小板に取り込まれたセロトニンは、血管の収縮の調節や、怪我をした時の血液の凝固などのために使われます。

このように小腸で作られたセロトニンが使われるのは、腸と血管のみで、脳で使われることはありません

脳は人間の体の中でも最も重要な場所のため、有害な物質が入ってこないように、血液脳関門というフィルタによって守られています。

セロトニンはこの血液脳関門を通過できないため、脳の深い部分の神経細胞まで届かないのです!

残念ながら脳で使われるセロトニンは、脳で作られた物だけで補うしかないのです。

でも、実際に腸内環境が良くなると、うつ病が改善するというデータがあります。いったいなぜなのでしょうか?

今度は腸内環境とうつ病の関係を見ていきましょう。

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腸内環境とうつ病の関係

腸内環境とうつ病の関係は、現在も研究が進められている段階です。

そこで、ここでは、現在分かっている範囲のことを見ていきましょう。

実は直接的な関係は解明されていない

腸内環境とうつ病の症状の関係の詳細は、実はまだ分かっていません。

あるマウスを使った実験では腸内環境が悪く、自閉症に似た症状を示すマウスの腸の中にビフィズス菌などの善玉菌を移植したところ、症状が改善したそうです。

また、同じ状態のマウスを2つのグループに分け、一方には抗うつ薬を、もう一方にはビフィズス菌を含むエサを与えたところ、ビフィズス菌を与えたマウスの方が症状の改善が大きかったそうです。

このように実験などでは、その効果が確認されていますが、その理由に関しては、分かってないことが多いのです。

なぜ、腸内環境が改善すると、うつ病の症状が改善するのでしょうか?その理由として考えられるのは、セロトニンを作るのに必要な物質があります。

腸内環境を改善するとセロトニンが作られやすくなる

既に説明した通り、セロトニンは血液脳関門を通りませんが、セロトニンを作るもとになる前駆体は通ることができます。

この前駆体がトリプトファンというアミノ酸です。

トリプトファンは必須アミノ酸のうちの一つで、人間の体内では作り出すことができません。更にこのトリプトファンからセロトニンが作り出される過程は次のようになります。

トリプトファン ⇒ 5-ヒドロキシトリプトファン ⇒ セロトニン

そして、まず5-ヒドロキシトリプトファンができる過程では、ビタミンB3ビタミンB9が必要になり、セロトニンができる過程では、ビタミンB6が必要になります。

実はセロトニンを作るのに必要なビタミンB群のほとんどは、腸内の善玉菌が作り出すものなのです。

こちらの記事にも書きましたが、腸内細菌は実に様々なビタミンを作ってくれます。
乳酸菌はビタミンを合成する!健康な腸はビタミン工場!

つまり、腸内環境が悪いと、セロトニンの原材料になるビタミンB群が不足して、体全体のセロトニンが不足してしまうのです。

これは、うつ病を悪化させるだけでなく、腸の蠕動運動も鈍くする原因にもなります。

腸内環境とうつ病の関係は、まだまだ研究段階ですが、腸と脳の働きは密接に関係していることは確かなのです!

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まとめ

腸内環境を改善することは、十分なセロトニンを作り出すために必要な、ビタミンB群を作り出すのに有効です。

腸の中の善玉菌が多いと十分な量のビタミンB群が作られるため、体が必要なセロトニンを作ることができます。

こうして作られたセロトニンは、次のような働きをします。

  • 腸の蠕動運動を促進する
  • 適度なやる気と心の安定をもたらす
  • 血管の収縮を促進する


セロトニンは主にこの3つの働きがありますが、小腸で作られるセロトニンは、腸と血管でしか使われません。

小腸で作られたセロトニンは、脳に運ばれることはあり得ないので、そんな間違った情報に惑わされないでくださいね。

バランスの良い食事と良好な腸内環境は、メンタルにも良い影響を与えます!善玉菌を増やして、平和な心で毎日を過ごしてくださいね!


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