乳酸菌は胃酸で死滅してしまう!整腸作用って本当にあるの?
ヨーグルトや乳酸菌飲料などのCMを見ていると、よく「生きたまま腸まで届く」などと言っているのをよく聞きます。実際に普通の乳酸菌は胃酸で死滅してしまいます。
そのため、胃酸でも死ににくい強靭な乳酸菌を探すために、各社、一生懸命研究しているわけです。そうなると、私たちは、乳酸菌食品の中に入っている乳酸菌が腸の中で、何か良いことをしてくれているんだなと想像してしまいます。
でも、実はそうではありません。私たちの腸の中で良いことを直接してくれるのは、腸の中に最初から住んでいた、ビフィズス菌などの善玉菌なんです!
じゃあ、「生きたまま腸に届く」ことに何の意味があるのでしょうか?乳酸菌食品を食べるとなぜ整腸作用があるのでしょうか?
今回は胃酸で死滅してしまう乳酸菌に、なぜ整腸作用があるのかについてお伝えします!
目次
乳酸菌は胃酸でほぼ全滅!
乳酸菌は生きたまま腸の届いた方が良いというイメージを、私たちは持っていると思います。
でも、実際には乳酸菌は非常に胃酸に弱い生物のため、ほとんどが胃の中で死んでしまいます。ただし、乳酸菌の種類によっても胃酸に対する強さが微妙に変わってきます。
その強さを考える時に、乳酸菌を次の2つに分けて考えると分かりやすいです。
- 植物性乳酸菌
- 動物性乳酸菌
乳酸菌の種類はもっとたくさんあるのですが、胃や腸の中での生存能力を考えた時に、この2つで特徴が分かれます。
順番にその特徴を解説します!
植物性乳酸菌
植物性乳酸菌とは、元々、自然界では植物の葉や茎の表面に付着して、生きている乳酸菌です。
直射日光や、温度の激しい上下、乾燥などの過酷な環境でも生きていくことができるため、基本的に生命力が強いのが特徴です。そのため、種類によっては胃酸に比較的強い種類も存在しますが、それでも生存率は1%以下です。
しかし、酸素が無いと生きていけません。人間の腸は奥に進めば進むほど酸素が少なく、特に大腸にはほとんど酸素が存在しないため、植物性乳酸菌は人間の腸の中に、定着することができません。
- 胃酸に対する強さ:△
- 腸への定着力:×
種類によっては胃酸に強い種類もいるが、それでも生存率は1%以下。
腸の中は酸素が無いので、どんなに長生きできる種類でも3日間程度。
動物性乳酸菌
動物性乳酸菌は、動物の腸の中に生存している乳酸菌です。
動物の腸の中は湿度も温度も快適な環境です。更に宿主の動物が食べた物が絶えず供給されるため、栄養にも困ることがありません。このような恵まれた環境で生活している動物性乳酸菌は、非常に生命力が弱いです。
また、既に説明した通り、動物の腸の中は酸素が存在しないため、動物性乳酸菌は酸素の無い環境で生きられるようになっており、逆に酸素に触れるとすぐに死んでしまいます。
動物性乳酸菌にとって、胃の中というのは、強い酸性で酸素も存在しているため、まさに地獄のような環境です!そのため、胃酸の中で生き残ることができる動物性乳酸菌は皆無です。
- 胃酸に対する強さ:×
- 腸への定着力:○
全く生き残ることができない。
腸の中は動物性乳酸菌の本来の生息場所なので、生きて届くことができれば、長生きすることが可能。
胃酸に比較的強いのは植物性乳酸菌ですが、どんなに胃酸に強い種類でも、生存率は1%以下です。このように乳酸菌は非常に胃酸に弱いのです。
乳酸菌の特徴については、こちらの記事にも書いているので、良ければご覧ください。
⇒ 乳酸菌の好気性と嫌気性の違い!ヨーグルト作りの必須知識!
これほどまでに胃酸に弱い乳酸菌ですが、植物性乳酸菌であれば、生き残る菌が多いのは確かです。では、「生きたまま腸に届く」乳酸菌食品を取る意味はあるのでしょうか?
今度は「生きたまま腸まで届く」ことの意味について見ていきましょう。
生きたまま腸まで届いても無意味!
乳酸菌が「生きたまま腸まで届く」と、腸にとって何か良いことがあるのでしょうか?
実は食べ物で取った乳酸菌が、生きたまま腸まで届いたとしても、ほとんど意味はありません!
一体なぜなのでしょうか?これも植物性と動物性の2つの場合で説明していきます。
植物性乳酸菌
植物性乳酸菌は生命力が強いので、胃酸の中で完全には死滅せず、生きたまま腸に届くことができます。
しかし、既に説明した通り、植物性乳酸菌は酸素が無ければ生きていけません。酸素が無い人間の大腸の中では、何の生命活動もできず、すぐに死んでしまうので、生きていても死んでいても関係ないのです!
「生きたまま腸に届く」なんて聞くと良さそうな気がしますが、実際には生きて届いても何か良いことがあるわけではないので、ちゃんとそのことを頭に入れておきましょう!
動物性乳酸菌
動物性乳酸菌は生命力が弱いので、胃酸の中では全滅します。とは言え、ごくごく僅かですが、生き残る菌もいます。
植物性乳酸菌に比べれば、はるかに少ない数ですが、動物性乳酸菌にとって、大腸は最も生活しやすい環境なので、定着して増えて腸内環境を整えてくれます。
ここまで聞くと動物性乳酸菌を多く含むヨーグルトを食べた方が良さそうな気がしますが、残念ながらあまり効果がありません。
実は私たちの大腸の中には、元々、動物性乳酸菌が生息しています。食べ物で動物性乳酸菌をたくさん取っても、ほとんどは胃酸で死んでしまい、生きたまま大腸まで届くのは、非常に少ないのです。
そのため、元々大腸の中に住んでいる動物性乳酸菌に比べて少なすぎるため、腸内環境を改善するほどの効果は得られないのです。
ここまで色々と説明してきましたが、要は乳酸菌食品の中の乳酸菌が生きたまま腸に届くことは稀で、例え生きたまま腸に届いても、腸内環境を改善する効果はほとんどないのです。
では、なぜヨーグルトなどの乳酸菌食品に整腸効果があるのでしょうか?
今度はあまり知られていない、乳酸菌食品に整腸作用がある理由について解説します。
乳酸菌に整腸作用がある理由
腸内環境を整えてくれる働きをする善玉菌の中心的な存在は、動物性乳酸菌であるビフィズス菌です。
このビフィズス菌が増えて活発に活動することで、様々な健康効果が生まれるため、私たちは、食べ物で乳酸菌をたくさん取ることで、腸の中に乳酸菌を定着させると良いと考えています。
しかし、乳酸菌食品に整腸作用がある理由は、食べた乳酸菌が腸の中に定着することではなく、元々腸の中にいる善玉菌を増やすことができるからなのです!
善玉菌を増えやすくするには、大きく分けて次の2つが大切です。
- 腸の中が酸性である
- 善玉菌のエサが豊富にある
乳酸菌食品は、この2つのポイントを兼ね備えています。
乳酸菌は発酵の過程で乳酸を作り出します。乳酸は酸性なので、乳酸菌食品を食べることで、腸内環境を酸性にすることができるのです。
また、乳酸菌の代謝物や、死んだ乳酸菌の細胞の中には、乳酸菌のエサになる物質が含まれているため、これらの物質が腸の中の善玉菌のエサになるのです。
つまり、乳酸菌は死んでいても腸の中の善玉菌を増やす効果があるため、わざわざ「生きたまま腸まで届く」乳酸菌を選ぶ必要など無いのです!
まとめ
私たちの多くは、乳酸菌が生きたまま腸まで届くから、腸内環境が改善すると思っているのではないでしょうか?
実は乳酸菌の整腸作用は、乳酸菌の生死は関係ありません。
乳酸菌食品に整腸作用がある理由はこの2つです!
- 乳酸菌発酵で作られる乳酸が腸内環境を酸性にするから
- 乳酸菌の代謝物や、乳酸菌の細胞内の物質が腸の中の善玉菌のエサになるから
これらの効果のおかげで、元々腸の中に住んでいる善玉菌が増えることによって、腸内環境が改善します。
生きたまま腸まで届く乳酸菌だから良い、という事ではないんです!それどころか、乳酸菌は胃酸の中ではほとんど死んでしまい、どんなに胃酸に強い種類でも、生存率は1%以下と言われています。
生きたままの方が良い感じがするので意外ですよね!
乳酸菌食品を継続して食べることが、腸の中の善玉菌を増やす秘訣なので、乳酸菌の種類にこだわり過ぎず、自分の好きな乳酸菌食品を食べてみてくださいね!
よくわかりました。